どうも、法人1期目のハシケン(@conteanime)です。
当サイトの記事は2019年内まで個人事業主として活動していた時期に書いていたものも多くあるので、著者の肩書き等の違いについてはあらかじめご了承下さい。
会社に今のままいても将来に不安を感じる、独立開業して自分自身のビジネスを興したい・・・独立開業を考える場面はいろいろなところであるんじゃないでしょうか?

今回は、独立する時に個人事業主と法人化のどちらを選ぶべきか・・・様々なポイントからまとめていきます。
独立開業の起業スタイルは個人事業主と法人、どちらがいいのか?
個人で独立開業するときは、「個人事業主」と「法人設立」のどちらにするかを決める必要があります。
事業規模や従業員数などによって向き不向きはありますが、大きな違いは「登記の有無」と「所得税と法人税のどちらを納めるか」の2点です。

ただそれぞれの法制度上の違いから税率・確定申告・各種控除・債務者への責任などにも差があるため、節税対策・会計負担・社会的信用などは変わってきます。

以降は、
・個人事業主……「開業届を出し、青色申告申請をしている」事業主
・法人……営利法人=株式会社
・・・という意味で使っていきます。
「個人事業主」とは結局なにか?
法人を設立せずに事業を行えば、税務上の区分はみな「個人事業主」の扱いになります。
個人事業主とは?なるにはどうする?独立した目線でわかりやすく解説!
個人事業主になる前にフリーランスや会社員との違いを知っておこう!
フリーランス・自営業など表現自体はいろいろとありますが、結局のところ個人が「事業所得」などで確定申告するとみな「個人事業主」です。
家族を事業専従者とするのは一般的ですが第三者を従業員として雇うことも可能です、個人事業主だからといって一個人ひとりで事業を全て行わないといけないわけではありません。
また「屋号」を用いれば店名やサービス名を前面に出せるので、一個人名で事業を行わなければいけないというものでもないんです。個人事業主の「個人」とはあくまで税務上の区分けであり、事業形態とは関係ありません。
個人事業主の屋号とは何か?種類や決め方・つけるアイデアまで総解説!
開業届を出し青色申告承認申請を行い「複式帳簿」で記帳していれば、青色申告者として確定申告ができます。
申告は個人として所得税で払う形となり事業と自身の所得を一体として各税金が算出されます、給与や報酬の概念はないため当然給与所得控除はありません。
個人事業主に必須の青色申告とは?白色申告との違いをおさえよう!
また事業歴や売上・所得が一定条件を満たすと、「消費税」や「個人事業税」の納付が義務となります。
・個人事業税……事業所得が年間で290万円以下なら免税
・消費税……開業から2年間、もしくは開業後2年以上経っても前々年の課税売上高が1,000万円以下の場合には免税
債務に対する責任は「無限責任」となり、事業の資産を処分して債権整理ができなかった場合は個人の財産を持ち出しても弁済する義務を負います。
▼個人事業主の特長まとめ
・手続き……開業届・青色申告承認申請書ほか
・確定申告……個人の確定申告 + 青色申告決算書(賃借対照表、損益計算書)
・納税……所得税・住民税・消費税・個人事業税ほか
・責任……無限責任
・事業年度……1/1~12/31
「法人」とは何を指すのか?
2006年に「最低資本金制度」が廃止され、理論的には資本金が1円で株式会社を設立できるようになりました。
また会社は一人でも設立できるため、設立要件に人数・資本金はほぼ無関係となります。
会社登記は管轄の法務局にて「設立登記申請書」等の必要書類と「定款」を提出し、登記簿謄本を取得します。
定款は公証役場で認証を受ける必要があり認証手数料等の作成費用がかかります、登記申請にも登録免許税が必要であわせて最低でも20万円程度の費用が必要となるでしょう。
事業の所得申告は法人として行う形になり、個人と事業の会計・納税が別々になります。
法人の納税は種類こそ増えますが法人税の累進性は所得税より低く、かつ自身への給与など計上できる経費の範囲が広がるので課税所得額を個人事業主よりおさえることが可能です。
債務に対する責任は「有限責任」で、会社設立にあたって出資した金額を上限としそれ以上の責任は負いません。
▼法人の特長まとめ
・手続き……法人登記(商号登記・法人実印作成・定款作成)ほか
・費用……登録免許税・登記事項証明書代・定款認証手数料・定款印紙代・定款謄本代・印鑑証明代など
・確定申告……法人税申告書 + 法人決算書(賃借対照表・損益計算書)・株主資本等変動計算書・勘定科目内訳書・法人事業概況説明書ほか
・納税……法人税・法人住民税・法人事業税・地方法人特別税・消費税・固定資産税ほか
・経費……従業員・役員給料、会社名義の保険料・住宅費なども経費に計上できる
・責任……有限責任(出資分のみ)
・事業年度……自由に設定できる
現在、起業するなら個人事業主か法人の方がいいのか?

事業規模の拡大に伴って資金調達・従業員の増加・取引先の拡張が求められる場合や、売上が一定額を超え節税対策が必要になった時に法人成りを検討しはじめる方が多いでしょう。
とはいえ、いきなり法人設立して起業していけないわけでもありません。

個人事業主で開業した場合のメリット・デメリット
法人設立と比べて最も大きな違いは、あらゆる手続き・手間が格段に少なく楽な点です。
起業時はすべきことも多く事業の先行きがあまり見えていない場合もよくあります、初期費用や固定費が少なく会計業務にかかる負担が少ない個人事業主の方が開業のハードルは低いものです。
納税や信用度の面で大きなメリットはありませんが逆にデメリットやリスクもほぼないので、全体でみるとリスクや負担が少ない点が個人事業主での開業の最大メリットであるともいえるでしょう。
▼個人事業主のメリット要素①開業手続き
特長は、開業自体は誰でも簡単にコストをかけずにできるところです。
必要なのは管轄の税務署に「開業届」(と「青色申告承認申請書」等)を出すくらいで、他にこれといった手間のかかる手続きは特にありません。
個人事業主とは?なるにはどうする?独立した目線でわかりやすく解説!
▼個人事業主のメリット要素②会計・納税の手間
青色申告特別控除をフル活用するなら複式帳簿で記帳し確定申告の際に青色申告決算書をあわせて提出する必要がありますが、手間という手間はそれくらいで事業規模によっては税理士に頼らずに個人で処理できるレベルです。
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▼個人事業主のメリット要素③保険加入の範囲
(事業専従者家族以外に)従業員がいなければ、労働保険(労災保険・雇用保険)の加入の義務はありません。
▼個人事業主のメリット要素④銀行口座の開設
口座開設は個人名義で行うため、開設自体のハードルは特にありません。
開業届に屋号を記載していれば屋号付き口座の開設も可能になり、ビジネス上の不便はほぼないといっていいでしょう。
個人事業主やフリーランスの屋号付き銀行口座おすすめはここだ!【2022年最新版】
▼個人事業主のデメリット要素①事業承継できない?
株式の譲渡や売却によって事業承継をする法人と違い、個人事業主は単に事業を引き継ぐという形はとれません。
手続きとしては譲渡者となる先代事業者が廃業届を提出し、後継者が改めて開業して実質の事業承継となります。
資産を引き継ぐ際は、その価額に応じて「贈与税」ないし「相続税」が課税されます。
屋号の引継ぎは特別な手続きは不要ですが、商号登記をしている場合は別途名義変更が必要になるでしょう。
▼個人事業主のデメリット要素②休暇・福利厚生・雇用保険がない
休暇制度や福利厚生・雇用保険は基本従業員のための制度なので、当然ながら個人事業主は対象外となります。
そのため自分自身の福利厚生費も経費にはできず、有給休暇も失業手当もありません。
法人を設立して開業した場合のメリット・デメリット
法人はまず設立自体に登記の手間と費用がかかります。そのうえ法人住民税の均等割り分や、税理士への支払いなどの固定費も必須となってきます。
法人はその存在自体が登記により証明されているので、事業の信用性は個人事業主より高くなります。
事業計画がしっかりしていて売り上げ見込みがある程度できているなら、資金調達や企業顧客との取引の面では法人の方が有利な点は多いでしょう。
納税の面でも経費・控除の範囲が広い分やりようが多く、節税が効果的にできる点は強みです。
個人事業主の経費はいくらまで?意味・メリットからできるものまで総まとめ!
▼法人設立のメリット①資金調達
創業時に限定していえば法人も個人事業主も業績はないに等しいため、融資の借りやすさにあまり差はないでしょう。
ただし法人の事業者は「有限責任」なので、日本政策金融公庫などの無担保・無保証の公的融資では万一会社がつぶれた場合でも免責され個人で借金を背負うことにはなりません。
▼法人設立のメリット②納税
所得が多ければ多いほど法人の方が有利な税制になります。
法人税の方が累進がゆるやかでかつ経費や控除の適用範囲が広いため、一定額以上の所得があれば課税所得を減らせます。
ただ赤字の場合でも法人住民税の均等割税額分は納付義務があるので、その点はデメリットになるでしょう。
報酬として経費で差し引いた分には当然個人に所得税がかかりますが、個人事業主と違って給与所得控除が適用されるのでその分も節税になります。
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▼法人設立のメリット③信用度(取引先条件・許認可・人材確保)
大手法人によっては取引条件として「法人であること」を求めてくる場合もあります。
また事業を行うにあたり登録や許認可が必要な際に、法人でないと認められないものもなかにはあります。
顧客ターゲットが「消費者」ならさほど意識するものではありませんが、事業内容によっては法人設立が条件になる場合もあるでしょう。
雇用の面でも法人の方がやはり有利です、応募する側からみれば法人の方が事業の安定性が高く感じられるためでしょう。
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▼法人設立のメリット④個人資産の確保
法人の場合、事業者は有限責任なので債務への責任は出資の範囲内で留まります。
また個人の収入は報酬として事業金から切り離せるため、個人の預貯金として財産確保ができます。
ただし大きな決済や借り入れでは連帯保証人になることを求められる例も多く、その場合の返済責任は個人事業主と同様に本人が負わなければなりません。
▼法人設立のデメリット要素①社会保険料・労働保険の加入義務
法人では自分自身が役員・従業員の扱いになるため、社会保険・労働保険への加入が義務となります。

▼法人設立のデメリット要素②事務負担
会計処理上、税理士や公認会計士への顧問依頼は必須となります。
事務作業の負担は個人事業主の比ではなく、決算公告や役員の改選登記・法人税申告など慣れない手続き・業務も多くなります。
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▼法人設立のデメリット要素③資金の扱いの自由度
個人資産の確保ができる反面、事業の資金を自己都合で自由に使えなくなります。
お金が入用の際は、契約書をつくってその契約に従い一定の利息も支払っていかなければなりません。

▼法人設立のデメリット要素④撤退コスト(解散の登記)
個人事業主は廃業届を出すだけで費用負担なく事業撤退できるのに対し、法人の解散は残っている財産を換価して分配したり債務返済に充てたりといった「清算」手続きが必要となります。
さらに解散登記・清算結了登記などの申請が必要で、設立時同様に登録免許税がかかります。休業の場合は届出を出すだけで手続きは済みますが、申告や納税の義務が継続する点は注意がいります。
こんなあなたは個人事業主、こんなあなたは法人設立を選ぼう!
ここまで見てきてどちらで開業したほうがいいか、個人事業主で開業しどこで法人化するか・・・のイメージが少しみえてきたんじゃないでしょうか。

▼①事業規模、売上高に起因するタイミング
・課税所得額が一定額を超え、法人化した方が個人としての可処分所得が増えるとき
・従業員・役員報酬として所得分散して、節税・資産の確保を行いたいとき
・消費税の免税期間を法人化によって実質延長したいとき
▼②事務会計処理の手間・コストに起因するタイミング
・会計処理が複雑化し顧問税理士との契約が必須になったとき
・社会保険・労働保険の加入適用事業所となったとき
▼③法人である必要性が求められるタイミング
・従業員や共同出資者が必要となり、会社形態が求められたとき
・取引先や許認可の都合上、法人でなければ事業が行えないとき
・スムーズな事業の継承をしたいとき
以上のポイントが複数あてはまるようなら、法人での起業・個人事業主の法人成りを検討していく頃合かもしれません。

まとめ
個人事業主や法人化は、無理してどちらを選ぶものではなく時期によって最適なポジションというものがあります。
基本的にはあなたの状況やビジネスの状態によって、妥当だと思える方を選べばいいでしょう。
