どうも、法人1期目のハシケン(@conteanime)です。
当サイトの記事は2019年内まで個人事業主として活動していた時期に書いていたものも多くあるので、著者の肩書き等の違いについてはあらかじめご了承下さい。

・個人事業主って何?
・フリーランスとどう違うの
・結局、どう進めていけばいいの?
・・・などなど、独立前から独立直後まで悩みかねない「個人事業主」に関連するさまざまな話題について実体験もふまえてどこよりも詳しく解説していきます。
「個人事業主」とは? 言葉の定義を知っておこう

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「個人事業主」とは?
法人を設立せず個人で事業を営んでいる人。個人事業者。自営業者。自営業主。
※小学館デジタル大辞泉より引用

法人を設立せず、
・・・税法上の区分では事業者は「個人」と「法人」に分かれていて「法人」でないものを「個人」としています、「法人」とは事業を行う団体として登記している人格をさし一般的には“会社”や“財団”などがあたります。
個人で、
・・・これは別に「自分一人で」という意味ではなく、組織に属さず(雇用ではない契約等で)事業を行うことを指しています。つまり雇用されていない、法人に属していないという意味の「個人」です。
事業を営んでいる人。
・・・単なる仕事・労働という意味ではなく、“生産・営利などの一定の目的を持って継続的・反復的に、経営する仕事”という意味です。
あらためてまとめると、「個人事業主」とは組織に属さず会社等としての法人を登記せずに継続的に生産・営利活動を営む人・・・となります。

「でも、フリーランスや自営業者とどう違うの?」と思うかもしれません、似たような言葉で「ノマド」「SOHO」「自由業」・・・といった言葉もあります。
厳密にいえば、税法上の「個人事業主」とは「法人」と区別するための言葉です。それ以外の特別な意味付けはさほどないんです。
ただし税法上の区分のため税務署に認知されるには、法人が登記が必要であるのと同様に個人事業主も「開業届」を税務署に提出する必要があります。

一方「フリーランス」は、雇用契約でない独立した契約で他者(他社)と事業に携わる働き方のシステムの一つです。
・・・参考までに「ノマド」・「SOHO」は、個人で仕事する際の働くスタイルを指します。また「自営業」とは自らが事業を営む業態の総称であり、時間に束縛されない職業として区分する際に使われます。
結局フリーランスも自営業も開業届を出して法人化(「法人成り」という)していないなら、税法上は個人事業主として区分されることになります。
開業届を出していなくても事業を行い所得があれば納税義務は生じるので、税法上は個人事業主に分類されます。
「フリーランス」や「自営業」、「一人法人」などとの違いについて

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見てきたように、フリーランスや自営業も個人事業主であり税法上の立場に違いはないことがわかりました。

いわゆる自営業という響きはおそらく、店舗など自前の拠点を持ち商品やサービスを提供する経営者のイメージが強いかと思います。
逆にフリーランスは、クリエイターや有資格者などが他社と業務委託をして行う労働形態で相手側からみると“外注”と呼ばれる業態がイメージされるんじゃないでしょうか。
業務委託とは、民法上の「請負契約」や「委任契約」などのことです。
- 請負契約・・・業務を受注した者が委託された業務の完成を約束し、業務を発注した者は成果物に対して報酬を支払う契約
- 委任契約・・・契約期間内に受注した業務に関して『行為の遂行』を目指した契約
請負契約はデザイナーやイラストレイターなどが案件ごとに契約し成果物に対し報酬をもらうもので、委任契約は弁護士や税理士のような契約期間内の業務遂行を仕事とするタイプになると思ってください。
「一人法人」とは?
“法人成り”とは、個人事業主が株式会社や合同会社などの法人を設立して事業を法人に変更することをいいます。

法人=組織や団体だからって複数の人が必須なわけではなく会社設立は一人でもできます、これを「一人法人」といいます。
ちなみに個人事業主も、“個人”だからといって業務を一人で行わなければならないわけではありません。
事業を法人化すると税法上の経費や報酬面においてメリットも多く、社会的信用度も増してビジネスの展開も広がります。反面、費用や手間がかかる上に事業の収益レベルによっては法人化が裏目に出てしまうこともあるので慎重に進めましょう。
個人事業主になる(開業する)メリット・デメリット

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ここでの“個人事業主になる”とは、開業届を税務署に提出し「個人事業主」という立場になってビジネスを始めることを指します。
ちなみに開業届の提出には、税務署へ開業の通知をすることと開業したという公的証明を得るという2種類の大きな意味をもっています。
開業届を出すメリット①確定申告で青色申告が行える
開業届を提出すると確定申告で青色申告が行えます(別途、青色申告承認申請が必要です)。青色申告は、独立してビジネスを始めた個人事業主にとって様々な恩恵があります。
☑青色申告の3つのメリット
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必要経費として認められる科目数・金額の増加&所得金額から控除される科目数・金額の増加
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純損失の繰越控除、純損失の繰戻しによる還付、特別税額控除
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更生および不服申し立て等での特典
▼具体例
- 所得から最大65万円を特別控除できる。
- 赤字の場合は3年間繰り越すことが可能になる。
- 専従者給与として家族への給与が全額必要経費に計上できる
- 30万円未満の減価償却資産は一括経費にできる。
- 自宅をオフィスにすると、家賃や電気代の一部も経費に計上できる。

☑青色申告の2つのデメリット
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青色申告承認申請書の提出・・・開業後2ヵ月以内ないし、青色申告の承認を受けようとする年の3月15日までに提出しなければならない。
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複式簿記での記帳・帳簿や受け取った請求書・領収書などの保存義務がある。
青色申告のメリットを全て享受するためには、期限内の承認申請の手続きと複式簿記での記帳が条件という会計処理のハードルがあります。
承認申請の必要がなく手続きが簡単な白色申告に比べると、たしかに青色申告は手続きの手間や義務が多くなります。ですが、ビジネスを進めていくうえで帳簿や各種手続きといったものは避けて通れないものです。

あとから白色申告に戻すことも可能です。
開業届を出すメリット②税務署と繋がる
開業届を出すと税務署に事業者として登録されて、納税に関する通知や税務上の手続きの連絡・起業者向けの告知等が税務署から送られてきます。
▼具体例
- ビギナー個人事業主を対象にしたセミナー開催の連絡
- 税に関する手続きのお知らせや必要な用紙が届く
開業届を出すメリット③「屋号」がもてる。
開業届には「屋号」を記載する項目があります。
ペンネーム類や旧姓・店名などを屋号とすることもできて、必要がなければ省略もでき後からの変更も可能です。
☑屋号を持つメリット
-
事業用の銀行口座屋号付名義を開設できる
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請求書・領収書等のあて名に使える
-
名刺や看板に記載すれば、事業をより印象づけられる
▼屋号付き銀行口座の取得はこの記事が参考になります。
個人事業主やフリーランスの屋号付き銀行口座おすすめはここだ!【2022年最新版】
開業届を出すメリット④社会的信用が増す
法人と違って登記をしていない個人事業主は、開業届こそが事業を始めた証しとなります。
開業届の控えには税務署の受付印が押されているので公的な書類と見なされます、取引先や顧客に対してや融資や補助金・助成金の手続きにおいても正規の手続きを行っている証明となります。
開業届を出すデメリット①失業保険・再就職手当のタイミングに注意

失業保険の給付条件は「就職しようとする意思といつでも就職できる能力があるにもかかわらず職業に就けず、積極的に求職活動を行っている状態にあること」なので、個人事業主として開業した時点で未就労・求職活動を行っているという条件から外れてしまいます。
開業届を提出すると、その時点でたとえいくら個人事業主としての収入が無かったとしても失業保険の受給資格を失ってしまうわけです。

失業保険の給付とは別に、再就職手当というものもあります。失業認定を受けている状態で再就職・起業をした場合にもらえる手当です。
開業する場合で再就職手当を申請するにはいくつか条件があるのですが、
- 退職後にハローワークに求人票を出して失業認定を受け、
- 失業保険の受給資格を得て、
- その後一定期間経過してから税務署に開業届を出し、
- ハローワークに再就職手当支給申請書を提出すること
・・・・・・が必須となります。

開業届を出すデメリット②社会保険の扶養範囲の条件
個人事業主が世帯主の扶養家族の場合は開業届をだすことで自営業者として扱われ、所得の多寡に関わらず扶養条件から外れてしまうこともあります。

会社を独立して個人事業主になるための一般的な進め方

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開業届を出す前
退職翌日から14日以内に国民健康保険・国民年金の加入手続きをする必要があり、手続きは自治体の役所窓口で出来ます。
失業給付を受ける場合は条件期間は開業せずに求職活動を行います、再就職手当を受ける場合は条件を満たしてから開業届を出し再就職手当を申請しましょう。
- 生計を一にする配偶者その他の親族である
- その年の12月31日現在で年齢が15歳以上
- その年を通じて6カ月を超える期間、事業にもっぱら従事している
・・・以上の条件を満たすと事業専従者と見なされ白色申告では「専従者控除」、青色申告では「専従者給与」として給与を全額経費に計上できます。
「専従者控除」は特に届け出は必要ないですが、「専従者給与」として経費に計上するには「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出が必要となります。
開業届を出したあと
▼詳しく知りたい場合は下記記事も参考になります。
個人事業主やフリーランスの屋号付き銀行口座おすすめはここだ!【2022年最新版】
個人事業者やフリーランス専用クレジットカードは早めに作るべき⁉
個人事業主が税理士に相談すべきタイミング・費用相場・メリットを実例紹介!
開業届の出し方
開業届、正式には「個人事業の開廃業届出書」といいます。A4一枚の書類です。
くりかえしますが開業届は税務署に開業したことを通知する役目を持ち、開業したことの公的証明にもなる重要な書類です。
提出期限は開業から1か月以内で、管轄の税務署で「納税地を所轄する税務署長宛」に提出します。通常2部作成し1部を提出用、もう1部が控え用です。税務署で控え用に受付印が押され返却されます。窓口手続きに費用・手数料は一切かかりません。

開業届作成時の注意点

納税地 | 事業所または自宅の住所 |
氏名 | 本名。押印は認印でもOK。ペンネームなどは屋号に記載 |
個人番号 | マイナンバーを記入 |
職業 | 開業した仕事をわかりやすく。大まかなカテゴリーでOK |
屋号 | 会社名や店の名前に相当するもの。省略可 |
届出の区分 | 「開業」に○印をつける |
所得の種類 | 該当するものをチェックする |
開業日 | 開業した日を記載。いつにするかは自分で決めてよい |
事業の概要 | 事業内容を具体的に記述 |
開業・廃業に伴う届出書の提出の有無 | 青色申告者になる場合→「有」をチェック (併せて、申請書の提出) |
給与等の支払の状況 | 開業時から人を雇用する場合→専従者・使用人ごとに人数・給与の定め方等を記入 |
マイナンバーと本人確認について
提出時には、税務署窓口では本人確認(マイナンバーが確認できる書類および運転免許証やパスポート等での身元確認)を求められます。
マイナンバーカードを持っていれば、それ自体をマイナンバーの確認と本人確認として使用できます。郵送で済ませる場合も、申請者本人のマイナンバーであることを証明するための本人確認書類の写しの添付が必要です。
届出書を書き終えたら職員に確認してもらい、その場で控え(コピーでも可)に税務署の受付印を押してもらいます。青色申告をするならこのタイミングで「青色申告承認申請書」も同じ窓口に出すことができます。

個人事業主の基本に関するまとめ

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今回は基本的な言葉の意味から似たフレーズとの違い、実際の開業届の出し方までくわしくおさえてきました。

開業届を出せば、いよいよあなたの個人事業主としての第一歩は踏み出されたことになります。

▼個人事業主としての覚悟はこちらを参考にしてください。