どうも、法人1期目のハシケン(@conteanime)です。
当サイトの記事は2019年内まで個人事業主として活動していた時期に書いていたものも多くあるので、著者の肩書き等の違いについてはあらかじめご了承下さい。
独立開業する際には、どうしてもまとまったお金が必要です。

ということで今回は、事業に必要なお金を得るための融資や資金調達方法について詳しくまとめます。
会社から独立・開業する際の資金について
個人事業主として独立開業する際に誰もがまず念頭に置くのは、「資金」の問題でしょう。
しっかりと先立つものがなければ、準備も整えられず事業を動かすこともできません。

言葉としては創業資金、独立開業資金、起業資金、開業準備金と色々な表現がありますが以下では「創業資金」で統一します。
創業資金の用途
創業資金はその名の通り、創業するために準備する事業資金のことです。
その用途は、大きく分けると「設備資金」と「運転資金」の2つに分けられます。
・設備資金……長期的に使用する設備や備品の導入コスト(機械・備品の購入費、内装費・改装費、不動産初期費用、ホームページ作成費など一時的にかかる費用)
・運転資金……短期的な要素に対して継続的にかかるコスト(商品・原材料仕入費、人件費、外注費、広告宣伝費、地代家賃など定期的・継続的にかかる費用
そしてこの設備資金と当面の運転資金をまかなうのが、創業資金となります。
創業資金の設定ポイント
▼設備資金に関して
行う業種によって必要な設備やその額は大きく異なりますが、最低限必要な設備を用意するのは皆共通です。
事業に不可欠な設備をリストアップし、最低限の設備資金がいくらかかるか見積もりましょう。無駄な経費の削減も大切ですが、まずは事業効率を高めるための支出かどうかの見極めが肝心です。
用途の説明が容易で費用の根拠資料となる見積書さえあれば、次に紹介する運転資金に比べると融資が受け入れられやすい傾向にあります。
▼運転資金に関して

事業が動き出して商品やサービスの提供が順調に行われても、掛取引などですぐに売上が手元に入らない場合もあります。
事業が軌道に乗るまでの期間や顧客の支払いの猶予期間を見越して考えると、最低でも半年から1年分の運転資金はあらかじめ確保しておかないと危険です。
▼独立後の生活費に関して
会社を独立して個人事業主になると、サラリーマン時代のような安定した給与は一切なくなります。

個人事業主の生活費は事業資金から「事業主貸」として引き出すのが一般的で(経費にはできません)、売上がない以上は事業資金からの引き出しはできませんし創業資金から生活費への支出も認められません。
独立開業当初は、運転資金同様に事業が軌道に乗るまでの生活費も必ず確保しておく必要があることをおさえておきましょう。
創業資金の調達について
独立開業する際の創業資金のベースは、主に「自己資金」となるでしょう。
自己資金とは、自己の預貯金等の所有金でその出どころが確かなお金を指します。

なかには自己資金がほぼゼロの状態で起業する場合もあるでしょう、その際は不足分の資金をどうにかして調達する必要があります。
▼創業資金の調達例
・親兄弟、親族、知人からの援助
・金融機関からの融資(創業融資)
・助成金、補助金の活用
足りない資金は融資で調達しよう!
もし創業資金が不足した状態で事業を始めると、事業規模が想定より小さくなり思ったような展開ができなくなってしまいます。
なにより、ささいな資金繰りの失敗による破たんのリスクが格段に高くなります。

創業資金を十分に用意しておくにこしたことはありません。そこで行うのが「資金調達」です。
起業の際に自己資金が足りず、資金調達を目的として受ける融資を「創業融資」といいます。
通常の事業融資では業績が審査基準となり「決算書」の提出が必須ですが、創業前後だと当然事業実績もなく決算書の提示なんてできません。

創業融資の審査基準
創業融資の審査で問われるのは、事業主の個々の能力と信用・事業計画の明確さの2点です。

▼主な審査基準
・自己資金……創業資金額における自己資金割合、または自己資金総額
・経験・能力……過去の勤務実績、資格、個人信用情報等が信頼に足るものか
・返済可能性……「事業計画書」で利益推移とその妥当性・返済の根拠をしっかりと説明できるか
・資金使途……設備投資の必要性・金額の根拠をはっきりと明示できるか
融資の際の「自己資金」とは?
審査の際に見られる「自己資金」は、自己の所有金額がそのまますべて認められるとはかぎりません。
通帳等で預貯金として確認できるものや、既に事業に投資している費用といった出どころが明確なものである必要があります。
タンス預金や一時的な多額の入金は、本人の資金である証拠に乏しく「見せ金」と判断されてしまうこともあります。
▼自己資金として認められる例
・自身の預金通帳に定期的に貯められたお金
・理由が明確な、返済義務のない贈与金
・源泉徴収票で証明できる退職金(予定含む)
・資産を売却した資金(売買契約書等の証憑が必要)
・みなし自己資金(すでに事業用として使ってしまった分)
▼自己資金として認められない例
・タンス預金など所在が明確でないお金
・融資直前の多額な入金・振込み
・個人から借りた返済義務のあるお金
まずはともかく大定番、「日本政策金融公庫」のすすめ
個人事業主が創業融資で資金調達をする際、まず最初に検討すべきは「日本政策金融公庫」の融資です。
数ある資金調達方法の中でももっともハードルが低くリスクの少ない、万人に開かれている融資制度といえるでしょう。
▼株式会社日本政策金融公庫とは?
・株式会社日本政策金融公庫法に基づいて設立された財務省所管の特殊会社
・100%政府出資の政策金融機関(政府系金融機関)の一つ
・業務の一つに、個人事業主や小規模義業者への小口融資、創業企業・事業再生などの支援を行う「国民生活事業」がある
日本政策金融公庫の融資の特長とは?
日本政策金融公庫(以下「公庫」)は、財務基盤や担保力が弱い小規模事業者や営業実績がない創業企業などの支援を目的としています。

ただし公庫の融資には「借入申込書」とあわせて「創業計画書」の提出が必須です。公庫の融資を希望するならしっかりした事業計画書(創業計画書)を作成しなければいけません。
事業計画書とは何か?融資を狙う個人事業主なら書き方も知っておこう!
▼公庫のメリット
・個人事業主でも借りやすく、他の融資に比べ審査の可決率が高い
・他の金融機関より金利が安い
・5年以上借りられる
・担保・保証人が不要の制度がある
・公庫から融資を受けると信用評価が増す(=他の金融機関からも融資を受けやすくなる)
※(信用保証協会の保証がつかないので)銀行からの借入とは別枠にできる
▼公庫のデメリット
・申込に必要な書類・証明書が多い
・創業資金総額の10分の1以上の自己資金が必要になる制度もある
・申込から融資まで1か月以上かかる
日本政策金融公庫の創業者向け融資制度について
以下で紹介するのは、これから開業するもしくは開業してまだ間もない人向けに公庫が設けている融資制度です。

相談窓口に行って条件を提示すれば適切なプランのアドバイスも受けられます、個人事業主の融資の窓口は「国民生活事業」になります。
▼1、新規開業資金
融資対象となるには、新たに事業を始める方や事業開始後おおむね7年以内で、
①雇用の創出を伴う事業を始める方
②現在お勤めの企業(6年以上)と同じ業種の事業を始める方
③産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方
・・・が要件となります。
原則担保・保証人が必要ですが、その代わりに自己資金要件がなく金利も低く設定されています。融資限度額も高く、融資審査は通りやすくなっています。
・使い道:新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金及び運転資金
・融資限度額:7,200万円(うち運転資金4,800万円)
・返済期間:設備資金20年以内、運転資金7年以内(うち据置期間2年以内)
・担保・保証人:原則必要・応相談
▼2、女性、若者/シニア起業家支援資金
女性または35歳未満か55歳以上の方で、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方が対象です。
その他の条件は、新規開業資金と同じです。
・使い道:新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする資金
・融資限度額:7,200万円(うち運転資金4,800万円)
・返済期間:設備資金20年以内、運転資金7年以内(うち据置期間2年以内)
・担保・保証人:原則必要・応相談
▼3、中小企業経営力強化資金
①経営革新又は異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓等により市場の創出・開拓(新規開業を行う場合を含む。)を行おうとする方
②自ら事業計画の策定を行い、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関による指導及び助言を受けている方
かつ、借主が策定した事業計画期間内において、年1回以上事業計画進捗状況を公庫に報告すること
・・・が融資要件となります。
事業計画・金利設定しだいで担保・保証人なしでの借入も可能です。形式上自己資金要件もありません。
・使い道:事業計画の実施のために必要とする設備資金および運転資金
・融資限度額:7,200万円(うち運転資金4,800万円)
・返済期間:設備資金20年以内、運転資金7年以内(うち据置期間2年以内)
・担保・保証人:応相談
★新創業融資制度
この制度は単体では利用できず、他の融資制度と組み合わせて利用する特例措置です。新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方が適用できます。
この制度を適用すると担保・保証人が不要になる代わりに、融資限度額が下がり金利もやや高くなります。
また、創業資金総額の10分の1以上の自己資金を用意しておかなければいけません(ただし6年以上の業種経験があれば、自己資金要件は形式上は免除される場合もあります)。
・自己資金要件:創業時において創業資金総額の10分の1以上
・使い道:新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金
・融資限度額:3,000万円(うち運転資金1,500万円)
・返済期間:各種融資制度で定めるご返済期間以内
・担保・保証人:原則不要
※上記以外の融資制度はこちらから
個人事業主が活用できるその他の融資・資金調達方法

以下に紹介するのは、公庫融資に比べ審査基準が厳しい・金利が高めなどデメリット要素があるものも多くなります。
ただ公庫の融資だけでは足りない、審査期間を待つ余裕がないなど状況によってはこのような資金調達も考えていかないといけないケースもあるでしょう。

信用保証貸付(信用保証協会が信用供与する制度融資)
信用保証協会とは、中小企業・小規模事業者の金融円滑化のために設立された公的機関です。
信用保証協会自体が直接融資をしてくれるわけではなく、「申込者が資金を調達できるよう保証を行う」機関になります。
一般的には金融機関を経由して申込み、審査を通し保証料を支払うと「保証人の代わり」になってくれます。信用保証協会の保証を得ると、保証人や担保を必要とせずに融資の幅が広がり貸付金利を下げることもできます。
万が一金融機関に返済できなくなった場合は信用保証協会が代位弁済してくれるので、開業間もない個人事業主にとっては公庫の融資の次に検討すべき選択肢といっていいでしょう。
プロパー融資(銀行)
信用保証協会をはさまず、直接金融機関から借り入れる融資です。
金額に上限がなく保証料もかかりませんが、その分審査は厳しく将来性や実績がかなり問われます。
利用できるかどうかはそれぞれの銀行の判断となるため、開業前後の個人事業主にはとてもハードルの高い融資といえるでしょう。
信用金庫・信用組合からの融資
会員や組合員の総合扶助・地域社会の発展に寄与することを目的としているので、地元の機関であれば個人事業主でも融資が受けやすい一面があります。
ただあらかじめ会費や手数料を支払わなければいけない場合が多く、審査基準や融資額も公庫や信用保証協会よりも厳しくなります。
ビジネスローン・カードローン
ノンバンクやクレジットカード会社等を含む金融機関からのローンによる借入です。
審査が通りやすく即日融資も可能な分、金利は高く設定されます。
ATMでの借入・返済ができ限度額の範囲内で何度も借り入れができる点は便利です、ただしカードローンは事業資金での用途を認めていないところもあります。
国による支援制度(補助金・助成金)
事業が動き始めていて、受給条件を満たすか申請をして審査に通れば受けられる公的な資金援助制度です。
受け取りまでに期間がかかる制度が多く申込期間や申請・審査の手間がネックですが、原則返還の必要がないというメリットは大きいでしょう。
・創業補助金・事業承継補助金
・小規模事業者持続化補助金
・ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス経営力向上支援事業)
・キャリアアップ助成金
・人材開発支援助成金
・地方再生中小企業創業助成金など

クラウドファンディング
最近増えている、インターネットを通じて出資者を集めて資金調達を行うシステムです。通常、返済の代わりとして商品やサービスの還元を条件に出資を募ります。
誰もができる方法ですが成否の予測は難しく、いかにうまく魅力を伝えられるかが重要になります。
返済の代わりに提供する品物やサービスなどによっては、作業や苦労が増える可能性もあるので注意しましょう。
ファクタリング
手数料を支払い売掛債権を買い取ってもらうことで、素早い資金化が可能になる仕組みです。売掛先へ債権譲渡の承諾をもらう必要があり、審査の対象は売掛先になります。
ただし、個人事業主が利用できるファクタリングは3社間までです。
まとめ:ビジネスには当然資金が必要! でも借金であることは忘れずに・・・
開業時だけに限らず、事業を拡大したり新たな設備投資をするときにも資金は必要です。その後も事業を進めていくと様々な機会に資金調達の必要性が生じるでしょう。
・・・とはいえ資金調達で得たお金は基本的に、いつか返さなければいけないお金であることを忘れてはいけません。
高額で長期の借入だといつまでも元本の返済と利息の支払が続きなかなか負担を減らせません、新規で融資を受けたい場合でも借入金が多ければその分不利になってしまいます。

資金調達はその都度必要最低限の金額を集めるにとどめ、事業の規模に見合った借入と返済期間で行うことが肝心です。
特に融資やローンはあくまで借入で、言い換えれば「借金」です。

★次はこちら!
事業計画書とは何か?融資を狙う個人事業主なら書き方も知っておこう!